祖母が作るお味噌汁には、じゃがいもが入っていた。
母方の祖母は、佐賀の田舎町の美容師だった。とにかくおしゃべりで、ちょっと毒舌で、だけど気は優しくていつも笑顔の人だった。
祖母宅と実家は同じ町内にあり、さらに両親は共働きだったので、私は保育園から小学校低学年まで、毎日のように祖母宅を訪ねていた。祖母が作ったご飯もたくさん食べた。
一番に思い出すのは、クチゾコの煮付けと、じゃがいもの入った味噌汁。
クチゾコは本当はクロウシノシタという名前の魚らしいが、私の地元でそう呼んでも多分誰にも通じない。シタビラメの仲間で、白身がとてもおいしい。靴底のような平べったい形状なのでクツゾコ。そこから更になまってクチゾコという地方名がついたらしい。
私達は「クッゾコ」と呼んでいた。
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